雪の時節も青々と実りをたたえる里。
眠りにつく事すら無く農事に精を出す男はその脈動と共に何かを刻み続ける。
家族が生きる地の為に、そして己の血が為に──。
産後 まもない獣に寄生し、母親の体液を乳へと変える。
宿主が成長すれば周囲の植物の発育を促すにおいを出す
その間、宿主に眠る間も与えず養分を摂らせ自らの力を強めていく。
宿主が疲れて力尽きるまで-----。
そんな蟲(乳潮)に侵された親子の物語。

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真冬--凍死寸前だったギンコはある家族に救われた。
しかし目をあけたギンコが見たものは一面の緑-----
「知らないうちに春が来てたってのか・・・」
昔は何も無かっただろう谷に 今は一面の作物が実っている。
それは1人の男が 昼も夜も、来る日も来る日も働き作り上げたもの---。
しかし ギンコはきずく
彼が昼夜疲れも知らず働けるのは「蟲」のせいだと---。
老いた父は「余計なことは言うな---」とギンコを遠ざけるものの・・・
「父さんには悪かったと思ってる。母さんを奪ったのは俺だ
だからこそ俺はまだ働かにゃならんのだ-----」
そんな息子を見つめ--全てを話すことに。
彼が生まれたとき食べるものはなく乳も出ず--途方に暮れた2人の前に
乳のような白くてあまい水が--。それをのんだ母から乳があふれ出して。
順調に育っていく子を見つめながら母は息を引き取ったのだという。
「私の病の事は、決してこの子には言わないでおくれね。
この子にはなにも知らず、ずっと笑っててほしいんだよ。」
そんな言葉を残して----。
「むごい事だったが母さんは最期までお前の幸福を願っておったよ」
自分の体が母親の血まで吸ってできていた・
この田も・・・みな蟲のおかげだったというのか----
全てを知った彼に蟲くだしを渡すギンコですが・・・・。
彼の瞳は前を向いていた。
「(蟲のせいなんかじゃない)すべて俺が望んだ事だ
俺には守らなきゃならないものがある。
たとえ、母さんを殺したものの力を借りてでも・・・」そんな息子を見つめ父はつぶやく。
「千代。あいつももう、うんと立派な人の親だ----」と。
なんだかほろりとさせられました。
この蟲のせいで母は死んだ。けれどこの蟲のお陰で
彼は生きのび--- 家族が生まれ 田ができ 今がある------。
蟲のすることを--恩恵と呼ぶか 禍と呼ぶかは
案外 人次第なのかもしれないですね。
彼はその後 蟲くだしをのんだのでしょうか・・・。
きっと飲んだに違いないですよね。だって----
家族を置いて死ぬわけにはいかないのだから。
彼は 家族を一生守らなかやならない。それはきっと母の願いでもあるだろう。
この豊かさを糧に生き抜く方法をきっと彼はみつける。そう信じたいです。
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